灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~





外の世界では、見えない力が
動いてる。
もう目の前まで来てるかもしれない。
いずれ此処も見つかる……。



朝を迎えるのが怖い。
いつまでもシーツにくるまり怯えてる
わけにもいかなくて……
郷田が残す赤い印が増えるたび
弱くなる自分が疎ましい。



夜明け前。
まだ暗い空を見上げて思う。



このまま…時が止まればいい。
どんなに願っても叶うことはない
けれど…。



遠くで浮かぶ月を見つめる。



光を避けて生きてきたのに……
これからはそれさえ許されなくなるの?



あたしが「安西ゆら」である限り、
追われる身なんだ。
ヘタに動いてもすぐに足跡はつく。



どうすれば………。



ふわっと後ろから温かい腕に包まれた。
『何考えてる?』って耳元で囁く
甘い声。
鼻をかすめる郷田の匂いに
熱くなる躰は歯止めが利かない。



すぐに乱される……
すぐに惑わされる……
こんなんじゃダメなのに……



あたしは………



郷田をどうしたいんだろう………











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