灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~



『ゆら…』と呼ぶ声。
生温かい声音が鼓膜をくすぐる。



これからどうする?と郷田は聞いた。
優しく見守る瞳を見据えて様子を
うかがう。



やめて……諭さないで………。



『いずれ此処も危ないな。』



静かな部屋に郷田の声が浮かんでは
消えた。



そっと伸びる郷田の手にビクッと
身構えてしまう。
郷田自身も少し驚いて一瞬動きは
止まった。



それでも両手を握りしめた温かさは
体温を通じて伝わる。



これが、郷田の体温なんだ……。
やっぱりあたしたち、生きてんだよね
……?



『一緒に行こう。』



え……?な…んて?



『ゆら、二人で生きていこう。』



眩暈がした。
全身を駆け巡る血液が一気に熱を
上げる。
鼓動が早くなる。










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