灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~



『俺は、お前を離さない。もうどんな
 ことがあってもな。』



真っすぐに注がれる視線から
逃れられない。



郷田は、こんなあたしと一緒に生きる
と言う。



『離れられないのは、お前も同じだろ
 ……?』



まるで心の中を見透かしたように
深く的を射抜いた言葉。



あたしは、



いつからこんなに
泣くようになったんだろう。



どこで覚えたの……?



わかってる。



これも全部、郷田と出逢ってから
知ったこと。



何をしても、どう足掻いても、
この男には見抜かれてしまうんだ。
その淡い瞳に見つめられると
身動きできなくなる。



ポロポロと零れ落ちる涙を指で
すくっては額にキスを落とす。










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