灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
もう誰にも会えないし
戻る場所もない。
唯一同じ異常者だったミホも死んだ。
薬物依存だったミホは列車に
飛び込んだ。
おそらく幻聴か幻覚だろうけど、
詳しくはニュースで読み上げられ
なかった。
今ならミホの気持ちが理解出来るかも
しれない。
最期を迎える気持ち…。
生きる価値が見当たらず、
薬に頼ってミホは落ちぶれていった。
同じ道を辿るのだろうか…。
いや、逃げなければ……
あたしはミホとは違う。
まだまだ捕まるわけにはいかない。
身柄がバレないうちに、
列車を乗り継ぎ移動を重ねた。
今だからこそ、
向かうべき場所がある。
脱走するたびに
足を踏み入れた場所。
蒸し暑い昼間に、
人気のない通りを過ぎ、
また此処の空気を吸うの。
歩くたびにざわつく草木は
二人の声なのか。