灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~



しけった線香にライターで
火をつける。
花は飾ったことがない。
昔から。



ジッと見つめる先に、ズシリと
構える墓石。



線香の煙が立つ中で
あたしは突っ立ったまま。
何度此処に来ても、
疑問しか浮かばなかった。
何度も怒りをぶつけた。



なんで……って叫んでも、
答えてくれない墓石を叩いたことも
あった。



コイツらはあたしの人生を売ったんだ。
まだ何も出来なかったあたしを残して
さっさと逝きやがった。



自分の弱さに負けた哀れな人間なんだ
……。



全身を駆けめぐる新たな憤りと
捌け口のない怒りはやがて
あたしを破壊する。



本当は、こんなことを言いに来た
んじゃない。
わかってるよ。
何も変わらないし答えはない。



だけど、初めて
すがりたい気持ちが生じた。



どんなに醜くても、
弱くても、儚くても……。













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