灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
刃先をゆっくりと喉仏に向ける。
瞳を閉じて奥歯を噛みしめた。
ざわつく草木も風も、やがて無音に
なる。
背筋に流れ落ちた汗。
喉が鳴る。
灰色の世界がようやく終わる。
それが唯一の救いであることに本当は
前から気付いていた。
息絶えることに恐怖心はない。
この肉体は生きていても、
中身は全部死んでいるから。
始めから見えることのない光を、
長いトンネルの出口を、
無意識に求めていたのかな。
決して折り合うことのない想いを
抱いて、ただ息をしていた。
それも今日で終わる。