灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~



押し殺していた感情が一気に
溢れ出る。



『郷田…郷田……!』



『頼む。俺から離れないでくれ…!』



耳元でそう懇願する郷田の背に
腕を回した。



逢いたかった……



逢いたかったよ、郷田………



もう一度、その手に触れたかった。



溢れ出る涙は細い指によって拭われる。
視界がクリアになった。



『俺たちは何度でも引かれあうんだ。
 今日みたいに。それでも逃げ切れ
 ると思うのか?』



優しい瞳があたしを覗く。



そんなわかりきったこと……
聞かないで。
もう後には引けないのよ?
わかって言ってるの?











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