灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~



あたしが、郷田をここまでさせたの。
ここまで背負わせてしまった。



『ユラ…?逃げよう…?二人なら何処
 でも行けるよ?』



いつでも冷静だった郷田はもう
何処にも居ない。
今目の前に居るのは、
きっとあたしの知らない郷田だ。



『お前を失ったら…今度こそ俺は
 生きていけない……。』



こらえていたモノが溢れ出た。
そっと頬に触れ口づけを交わす。



もう、どんな言葉も無意味な気がした。
触れているこの時だけが
唯一救われるの。



『あたしだって…生きていけない…。』



あんたが居なくなるなんて
考えられないよ……。
そんなの死んだ方がマシ。



郷田も同じ想いなんだね……。



それが何より嬉しい。
あたし、幸せだよ。










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