灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
『お前の服買いに行くに決まって
んだろ。』
『はっ!?』
『全部捨てちまったしな。ちょうど
いい。明日からお前は生まれ変わ
るんだ。新しい服、新しい環境で
生きていく。何もかも、真新しい
自分でな。』
“お前は生まれ変わる”
沸々とわきあがる衝動に頬が
ピクリと痙攣する。
『わかったようなこと言わないで。』
そう言いながらも
幾度となく今のセリフが
リピートされてる。
『じゃあまた自分の身を削って生きて
いくつもりか?繰り返しても報われ
ることなんてないぞ。』
そんなのとっくにわかってて
やってんだよ。
『…仕方ないだろ』
声が小さすぎて男には届いてないと思う。
ベットのすぐそばまで寄り、
『おい』とあたしを呼ぶ。
『俺の目を見ろ。』
深く澄んだ灰色。
正直、見据えるのは
不可能に近い。