灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~



『お前の服買いに行くに決まって
 んだろ。』



『はっ!?』



『全部捨てちまったしな。ちょうど
 いい。明日からお前は生まれ変わ
 るんだ。新しい服、新しい環境で
 生きていく。何もかも、真新しい
 自分でな。』



“お前は生まれ変わる”



沸々とわきあがる衝動に頬が
ピクリと痙攣する。



『わかったようなこと言わないで。』



そう言いながらも
幾度となく今のセリフが
リピートされてる。



『じゃあまた自分の身を削って生きて
 いくつもりか?繰り返しても報われ
 ることなんてないぞ。』



そんなのとっくにわかってて
やってんだよ。



『…仕方ないだろ』



声が小さすぎて男には届いてないと思う。



ベットのすぐそばまで寄り、
『おい』とあたしを呼ぶ。



『俺の目を見ろ。』



深く澄んだ灰色。
正直、見据えるのは
不可能に近い。











< 31 / 300 >

この作品をシェア

pagetop