灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
『お前…何から逃げてる?』
え………?
『安心しろ。俺がかくまってやる
から。』
ただポケットに手を入れている
立ち振る舞いさえキマッていて、
見上げる視線を思わず
そらしてしまう。
一体、何のために
こんなことを言うのか。
『あんた、何企んでんの?あたしを
かくまってAVにでも出させてひと
儲けでもするつもり?』
この瞳の奥の、心が掴めない。
冷ややかな笑みも素性も全てが
謎めいている。
『お前はあんたとしか呼べないのか。』
『お互い様だし。』
『……アキ。』
虚しく響く偽りの名。
ゆっくりと顔を上げた。
呼吸を忘れてしまうほど
見とれてしまう微笑み。
きっとあたしはこれからも、
この時の郷田の言葉を一生
忘れないと思う。