灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~



『もう独りはおしまいだ。これから
 先、絶対忘れられない人生にして
 やる。』



煌めいた澄んだ瞳。
自信に満ちた口角。
全てがあたしにとっては
ロックオンで、
悲鳴をあげ続けていた躰が
一瞬解き放たれた気がした。



翌日。



一睡も出来なかった。
考えれば考えるほど
突然与えられたこの世界が
怖くて仕方なかった。



広い部屋の中を何度も
見渡した。
どこからか見られてる
気がして落ち着かない。



冷たいベットの上で
膝を抱えて朝を迎えた。



『おはよう、アキ。』



リビングの方へ行くと
コーヒー片手に新聞を広げ
涼しい横顔を見せる。



おもむろに席を立ち、
二人分の朝食が見てる間に
テーブルに並べられていく。
 


『突っ立ってないで座ったらどう?』



不思議そうに笑いながら
言葉を投げかけられる。



警戒しながら椅子に座ると
焼きあがったトーストが
目の前に置かれて
『じゃあ食べようか』と彼は言った。














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