灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
『コーヒーのミルクと砂糖は
各自でな。』
中央にそれぞれ置いてくれる。
一言も話さないまま
あたしは彼を見つめていた。
毅然とした態度に
見とれているわけじゃない。
相手にとって、
これがどんな有益に繋がるのか、
それだけを考えていた。
朝まで考えていたけど、
何ひとつわからないまま…。
『お腹、すいてるだろ?食べないと
もたないぞ。』
そんな会話があったかどうかも
定かじゃないくらい、
ただぼんやりとその瞳を見つめていた。
錯覚さえ覚える。
彼は、味方なのかもって。
そんなはずないのに。
大人はみんな、
平気な顔して斬りつけるから。
血も涙もない光景を
嫌というほど見てきたんだ。
だから騙されるもんかって……
ぼんやりしていた視界で
ゆっくり焦点を合わせたら、
真っすぐに絡み合う視線。
真っ白なシャツが眩しくて
くっきり二重に薄い唇。
こぼれさす朝日とともに
向けられた微笑み。
時折見せる鋭い目つきが
嘘のようだ。