灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
『怪しい薬なんて入ってないから。
これだけは信用して?』
信用…?
バカじゃないの。
他人なんて信用しないよ。
あたしが信用してるのは……
一緒に逃げた、ミホだけ。
ミホも今頃きっと、
うまくやってるに決まってる。
あたしみたいに、こんな男に
捕まったりしてないはず。
ガタッと隣の椅子が引かれ、
彼は座った。
あたしの食パンを手でちぎって
一口食べてみせる。
『これで信用出来る?』
視線を交わし、前を向いた。
相手にしないのが一番手っ取り早い。
すると、腰回りに腕が入り
椅子ごと少しだけ
彼の方向へ向けられた。
嫌でも重なる視線。
『頼むから食べてよ。』
どうして、ここまで強要されるのか。
『今のアキ…ガリガリだぜ?
これ以上痩せるなよ。』
そう言われ、
改めて自分の躰を見る。
何ら変わりはない。
いつもと同じ。
でも彼にはそう映ってるんだろう。