灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
勢い良く車庫から飛び出した車。
慌てて文句を言った。
『てめぇ殺す気か!』
『バーカ。スピード出すのが気持ち
いいんだろが。』
こいつ…単なるスピード狂かよ。
『ハハハ。冗談だよ。女乗せてりゃ
安全運転さ。』
『どーだか。』
走り出した車内で静かに流れるBGM。
知らない洋楽が流れてる。
時折ビートを刻みながら運転してる。
窓の外の景色を見ながら思った。
行き先は知らない。
だけどあたしはこの車に
乗り込んだ。
ちなみに隣の男もよく知らない。
でも、何かが変われる気がした
だなんて、この時不覚にも
感じてしまってた。
曲のボリュームが上がり、
知らない間にあたしも
心の中でビートを刻んでた。
きっともうこの時から
戻れないよね、
あたしたち……