灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
目の回りにふわりと何かが
触れている。
軽く寄りかかっているのは
何だろう…。
薄暗かった視界が徐々に
明るくなって、
歪んでいた焦点が一つに
重なる。
郷田……?
『アキ……苦しいか?』
なんで……此処に?
『苦しいのか?』
郷田の顔がはっきり見えたり
歪んで見えたりした。
声もうまく出せないで
まばたきを繰り返す。
『アキ…。俺はまだ、お前を
逝かせはしないぞ。』
まばらな呼吸を整えるように
柔らかな郷田の唇が
あたしの唇を覆い隠して
酸素を送ってくれる。
ゆっくりとその酸素を吸った。
胸いっぱいに広がっていくのを感じ、
それが妙に心地良くて
また瞼を閉じた。
唇が離れる頃には、
再び深い眠りに落ちていく─────