灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
魔法にでもかかったかのようだ。
また、郷田に助けられた。
いとも簡単に。
このあたしのどうしようもない
心の沈め方を郷田は知っている。
『アキ…』って優しく呼ばないで。
あたしは『アキ』じゃない…。
あんな風に思われるほどの人間
でもない。
だけど確実に広がっていく。
孤独に慣れたはずの心が蝕まれて
少しずつ溶け出している。
浮き彫りだった輪郭が、
次第に曖昧になっていくんだ…。
郷田……。
どうしてあんたは
あたしの心に
痛みだけを残したの……
あんたのその存在そのものが
癒えたはずの傷を引っ掻き回す。