灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
疎ましくて仕方なかった。
それなのに、
目が覚めた灰色の世界で
あんたが微笑んでると
不思議と力が抜けてく気がした。
理由なんてないし、説明つかない。
だけどあたしは此処に居る。
自ら選んでこの身を預けた。
部屋のドアがノックされたら、
ほら。
長めの前髪をかき分けて
ドア越しに立つ灰色の瞳。
独特な存在感を放ち、
口角を上げてこう言うの。
『メシ…食うか?』
ベットの上に座りながら見上げる。
グゥ……と鳴るお腹の音。
聞こえたのか、笑いながら
あたしの元へ来て。
『食べたい時に食べればいい。』
差し出された手にこの手を
重ねたのは
特に信用したわけじゃない。
だけど嫌でも伝わる体温が
心地良くて、
不思議なほどに、
吸い込まれるように、
あたしは郷田の手を握り返していた
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