灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
『怖く…ないの…?』
姿勢を正した郷田の瞳に
小さなあたしが映っている。
『何が…?』
一瞬開いた口は、
次の言葉を躊躇った。
下唇を噛みしめる。
『あたしと……一緒に居て。』
言った直後に酷く後悔した。
真っすぐな瞳の中のあたしは
なんてちっぽけなんだろう。
表情ひとつ変えない郷田は
何を言う…?
一度視線を落として、
再び向き合った時。
『人はそれぞれに闇を持って生きて
る。違って当たり前だし合わなく
て当然だ。
それでも一緒に居る、居たいと
思う相手は、その闇ともうまく
付き合えるかどうかだと思う。
人間関係なんてそんなもんじゃない
のか?』
何とも合理的で、
かつ郷田らしい答えだと思った。
『そんな簡単にはいかないよ…。』
例えそんな関係を築けたとしても、
それは絶対にあたしとではない。
このあたしが他の誰かと
何かを築き上げることなんて
不可能なんだ。