灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~




いつも、どこからか
聴いたことのない洋楽が
壁を伝い聴こえてくる。
おそらく、郷田の趣味だろう。
流しているのも、
郷田の部屋からだと思う。



時折チロリンと鳴る
チャイムの音に肩を上げてしまう。
毎回、アイツらじゃないかと
心臓が飛び跳ねる。



大丈夫。
足跡はまだ嗅ぎつかれてないはず。
でも、時間の問題かもしれない。



もしも捜査のメスが入れば
此処には居られない。
すぐに出て行く準備は常に
出来ている。



持ってくモノなんてないから
この身ひとつで
また違う闇に潜り込むだけ。



チャイムが鳴れば
リビングに運ばれる段ボール箱。



こっそり覗いてみると、
どうやらネットで買い物を
しているようだ。
次々に出てくる食材を
冷蔵庫へ運んでいる。



あたしに気付いた郷田は
ニッコリ微笑んで
『どうした?』と聞く。



『別に』と答えるあたし。



2人の会話は単語ばかり。
わざと続かないように仕向けて
いるけど、今日は少し
聞いてみたいことがあった。











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