灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~



そんなの、ズルイ…。
他人なんてどうでもいいけど、
この唄声の裏に潜む黒い影に
自分を重ねてしまっていた。



『売上金はElickが育った孤児院に
 寄付されてるみたいだけどな。』



『どーだか。ただの憶測でしょ。』


 
『確かに。死んだら全て終わりだ。
 何も証明出来ない。』



わかってる…。
それでも死を選ぶ気持ちは
彼にしかわからない事。
死んだ後、
彼は一体何を感じただろうか。
魂はどこに向かうのだろう。



あたしは……?



もう少し、
楽しく生きたかったとでも
思うだろうか。
死んで楽になりたいと
願うだろうか。



郷田に助けられたあの日。
もしもあのまま死んでいたら?



もちろん此処には居ないし
憎まれ口もたたいてない。
郷田が作る美味しい料理も
口にはしてないんだ。



キュッと水道水を止める音がして。



『部屋に来るか?』



優しく微笑む郷田。



『え…?』



『全曲揃ってるぜ?』



『…行く。』 



即答していた。
彼を、Elick.Joneを一目
見たいと思ったから。










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