灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
『あぁ、彼は一度もジャケット写真
に自分を載せたことはない。
その風景画も、後になってわかった
ことだけど、全て孤児院から見える
風景らしい。』
しばし見とれて言葉が出ない。
手に取る作品全てが、
どこかの窓から写し出されている。
四角い窓。
あまりにも冷ややかな
四角い空間。
そこから流れ出す
悲しい旋律。
『きっと彼は、何か訴えたかった
はずなんだ。』
隣でそう言った郷田を見上げた。
その視線は、プレーヤーの刺す
針を捕らえている。
少しだけ、共感した。
いや、共感ではなく、
共鳴と言うべきだろうか。
『それが音楽に全て表れている。
アキもそう感じたかい?』
心地良い音色と郷田の声。
再びジャケ写に視線を戻す。