灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
『離れろよ。』
躰中が熱い。
『こんな頬を赤らめてるのに?』
指で顎を持ち上げられる。
首を振ってその指から逃れた。
きつく睨み付けたあたしに
怯む様子もなく『アキ』と呼ぶ。
甘い声で呼ばれると
嫌でも心を合わせてしまう。
何かに引き寄せられるように。
『お前…やっぱいい目をしてる。
俺はずっと、そんな目をした
女を探してた。』
鎖骨にかかる髪を
郷田の指がさらりとのける。
一度視線を落として
また睨み付けた。
『勿体無い…。せっかくのいい女
なんだから。色目使えよ。』
『あんたには使わない。』
『へぇ…。益々興味わいちゃうな。
逃げ場ないけどどうする?』
ジリジリと躰を寄せ付け
逃げる隙さえ与えない状況で
顔は近付いてくる。
彫りの深い顔立ち。
長い睫毛が揺れて、
互いの吐息が顔にかかった。
『抵抗しないの?ホントにしちゃう
よ?場合によっては最後までね。』
クスッと笑ってあたしを試してる。