灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
5. 剥がれてく心
ギターのサウンドから始まる
悲しいメロディー。
何度もリピートしていたら自然と
口ずさめるようにまでなっていた。
最近では、
窓際のイスに腰掛け
遠目に外を眺めるのが日課だ。
すぐそばに大きな桜の木が
景色の半分を占めている。
『それ、Never Returnedて曲だよ。』
ネバーリターンド…?
何それ。
『帰らぬ人って意味さ。』
帰らぬ人……。
『歌詞、訳してあげようか?』
『え?』
『その曲、気に入ってんだろ?
何回も聴いてる。』
確かに、たくさんある中で
この曲だけが耳から離れない。
郷田は白い紙にスラスラと
歌詞を書き始めた。
隣でそれを目で追う。