スターの結婚
ACT1.嵐のような夜
都内某所――


大勢のマスコミ陣がカメラやマイクを手に大スターの登場を待っていた。


今日は、人気俳優 瀬野公平がイメージキャラクターをつとめる飲料水のプレス発表会なのだ。


マスコミの狙いはもちろん飲料水の魅力ではなく、公平の発言だ。


公平は最近、人気女優の風間悠果里と熱愛説が出たばかり。


「なんか今日人多くないか?」


舞台裏で待機していた公平がマネージャーの仁川大介(にがわ だいすけ)に怪訝そうな顔をして聞いた。


大介は公平より6歳年下の24歳。

俳優を志して事務所に入ったもののあまりの<大根役者>ぶりに社長によってマネージャーに転身させられたのだ。


「悠果里さんとのことですよ。マジ発言には注意して下さいよ!」

「はいは〜い。」


公平が気の抜けた返事をすると大介は呆れた顔をした。


「間もなく出番です!」


スタッフの"合図"に公平はキリッとした"スターの顔"になりスタンバイした。


「それでは本商品のイメージキャラクター、俳優 瀬野公平さんの登場です」


司会者の合図と共にマスコミ陣は一斉にカメラのフラッシュをたいた。


壇上には身長182センチの体にスーツを着た公平が商品のペットボトルを持って登場した。


まばゆいフラッシュにも眩しがることなく微笑みかける公平はプロそのものだ。


フォトセッションも終わり、いよいよ質疑応答。


マスコミ各社にはあらかじめ主催者側から<商品のことに関する質問意外はするな>という通告があるはずだがマスコミにはそんなの関係なし。


大スターが熱愛報道が出て以来、はじめて公の場に出てくるのだから。


「瀬野さ〜ん!風間さんとのご関係は?」


「良いお友達ですよ。ご飯も一緒に行きますし。」


「それは恋人ということではないのですか?」


「恋人!?それはないです。笑」


「恐れ入ります。質問は商品に関することのみでお願い致します。」


司会者が恐る恐るストップをかけたがマスコミ陣は無視。
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