スターの結婚
「わかった...」


そう言うと悠果里はソファの横に置いていた鞄を取りリビングを出て行こうとした。


「帰るの?」


「うん。」


公平は悠果里を引き止める言葉が見つからなかった。


悠果里が帰った後、公平の耳には悠果里が言った


『公平はズルいよ』


という言葉が頭の中で反芻していた。


「そうだよ。俺はズルい男さ。」


さっきまで悠果里が寝ていたソファに横になるとうっすらと悠果里の匂いがする。


公平はそのままソファに横になりながら悠果里のことを考えていた。


悠果里が帰って1時間が経った頃


鞄の中の携帯が鳴った。


「はい。」


公平は発信者を確認せず電話に出た。


「あんたまたうちの妹泣かせたの!?」


「はあ?」


発信者は沙織里だ。


「悠果里がさっき泣いて帰ってきたの。理由聞いても言わなかったけどどうせ会うとしたらあんたしかいないから。」


「あいつが勝手に帰ったんですよ!」


「どうでもいいけど、どうにかして頂戴!うるさくて寝れやしないわよ!」


この時、公平は『妹を心配してんじゃねーのかよ!』と心の中で呟いた。


「じゃあ悠果里に伝えて下さい。いつもの公園で待ってるって。来るまで...イヤ、撮影があるから朝の6時半まで待ってるって。」


「あんたそれ本気で言ってるの?」


「はい。だって家まで行って週刊紙に撮られたらマズいし、多分まさか瀬野公平と風間悠果里が公園で会ってる、なんて思わないでしょうし...」


二人はお互いの家をあまり行き来するのではなく会いたい時は深夜の小さな公園で会うのが定番なのだ。


誰もいない真夜中の公園で悠果里と子供みたいに遊んだり、話をしたりするのが公平にとっては宝物のような時間だった。
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