『初恋』
「…」

取りあえずつくまで無視。
しゅーてんだからこの人は必ず降りる。
わざわざ避けてくださいなんて言わなくていいと思った。
でも…隣の人は付いても避けてくれなかった。
どころか寝たまんま。

「はぁ」

メンドイし前の席をまたごうかと思った瞬間。

「邪魔とか言えばいいのに」

と隣から低い声。

「…起きてたのならどけてください」

足を元に戻して言う私。

「いいよ?そのかわり道案内して」
「…はぁ」

かわりってなんですか?
公共の場所で取引は無でしょう。
…にしても…イケメンだなぁ。
この人。黒髪でサラサラしてるし色白で祖の髪が映えてる。
あーぁ。並ぶとみじめ。
カラカラとカバンを鳴らして歩く私を見て。

「ドコイクノとか聞かないの?」
「え。本当に道案内しないといけないの?」

普通に聞き返す。すると…

「アハハハッ。変わってねぇ!」

なんて笑いだす者だからビックリ。
というか…変わってない?どういうことだ?

「アハハッ…あぁ…覚えてねぇ?俺だよ。佐久だよ」

佐…久?聞き覚えのある名前。
…あ。

「お父さんの友達の子供」

普通に棒読みで返した。
思い出した。たしか昔…わたしが6歳の時こいつと何回か
会った事がある。でも名前はギリギリだった。興味ないし。

「そんな覚え方あるかよ」

前では苦笑しながらもどこかショック気な男。コイツと幼馴染なんだっけ?覚えてないな。

「まぁいいや。久しぶり。唯」
「…久しぶり。…で?ドコ行きたいの。道案内」
「あぁ。おまえんチ」
「は?」

なんでアンタが家に来るの?

「なんか親父たちがなにかたくらんでるらしくて…」
「じゃあ私寮に帰る」

やっと一時間かけて来た場所で言うのもなんだが嫌だ。

「お前寮に入ってたの?」
「え?あぁ…まぁ?」
「ふぅん?だから見かけないわけだよな」
「だからなに」
「いやぁ?俺聖蘭男子高校に通ってんだけどさ?」
「嘘だ」

絶対。だって聖蘭男子高校は聖蘭女子高校と同じくらい
レベルが高い。そんな所にこんなバカが居るはずない。


< 3 / 12 >

この作品をシェア

pagetop