『初恋』
入口から声がかかる。

「なに」
「晩飯そんなのでいいの?」
「ああ。うぅん、明日はしっかり作るけど…今日は」

と言いかけた所で携帯が鳴った。
メールだ。乃絵からだった。
――ユー!今どこ?!明日遊園地で待ってるから!――。

「…え?」

なんだこのメール。

「どうしたんだ?」
「い…嫌?何でもない。」

好きなパンの入った袋を一つつまんでレジに運び
買い物終了。
コンビニを出て公園に向かう。

「おい。家に帰んねぇのかよ」
「帰ったら多分お父さんの事殴っちゃう」
「うん、帰んない方が良いな」
「でしょ」
「でもなんで」
「…お母さんに似てるって言われたから」

ボソッと小さくつぶやく。

「え?」

でも相手は聞き取れなかったらしく聞き直してくる。

「なんでもない」

パリッと袋を開けパンを頬張る。

「おなか減ってないわけ?」
「うん。減ってない」
「なんで」
「なんでだろ。うーん。昼カップめん食ったから。」

ドゲシッ。一発けりをいれた。背中に。

「ぐほぉ?!」
「やけどしたりしたらどうするのよ」
「は?」
「やけどしてそれが延焼したり化膿したりして…」
「いやいやちょっとまて?」
「食中毒になったりしたりして…!」
「ちょっ・・・唯?」
「それから家事になったりして…」
「おい。唯?大丈夫か?!」

思考が止まる。
もしお母さんみたいに私の身近で死んじゃったら?
私どうするの…?これ以上怖さを知りたくない。

「大丈夫だったんだから大丈夫だ」

意味のわからない言葉が耳に入る。

「もう…」

お母さんみたにならないで。と小さく。誰にも聞こえないようにつぶやいた。
パンも食べ終わり家に帰ると…

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