2度目の恋は、やさしい蜜の味
「俺、時計のデザイナー目指してるんだ。まだ駆け出しで修業の身なんだけど……。君を思ってデザインしてみた。だから貰ってくれると嬉しい」
告白されている気分になる、と少女は思いながら、おずおずと自分の右手を男性に差し出した。
差し出した手は空を切り、少女の膝の上にあった左手を男性は自分の右手で掴むと、そのまま腕時計を少女の左手首に着けた。
「あ、あの……」
少女は恥ずかしさで顔が紅潮するのを感じた。
男性はそんな少女の気持ちも知らずに、腕時計ごと少女の手首をつかんだまま祈るように目を閉じた。
時間にして数秒であったが、少女にとっては長い時間に感じられた。
男性は目を開けると、カチッという音と共に少女の手を解放した。
そしてゆっくりとした口調で言葉を呟いた。
「君の心に合わせて時を刻んでくれる魔法の時計だよ」