それは運命のいたずら
「うるさいなーっ!」
もう自分が情けなさ過ぎて泣けて来る。
ハイソックス汚れっちゃってるし。
スカートについた砂埃を掃っている途中、背後から軽快な足音が聞こえてきた。
「令~おはよぉ♪」
私には目もくれず、その足音の主は令に軽く抱き着いた。
「美帆ちゃんおはー」
令の彼女(?)が、上目遣い、アヒル口、甘ったるい声というぶりっ子攻撃を朝から3連発もやってくれた。
…見なかったことにしよう。
朝なのに私のテンションは、最低ラインにきていた。
「じゃぁなバカ実杏」
「はいはい。
さっさとどっか行け」
令の彼女(?)は、私を見ながら勝ち誇ったような顔をした。
私は令の弟だっつの!
勘違いもいいとこ…
遅刻寸前の生徒たちの群れをトボトボ歩いていると、後ろから誰かがぶつかってきた。
「あっごめん、って実杏か」
後ろを振り向くと、桐谷宙斗が立っていた。
どいつもこいつも朝っぱらからなんなんだっ!
「あんたねー!
私に何度ぶつかれば気が済むの?
絶対わざとでしょ!」
昨日といい、今日といい…
単なる偶然とは思えない。
「それよりさ、令と知り合い?」
こいつ、軽くスルーしやがった。
「…知り合いも何も弟だけど」