ガリ勉くんに愛の手を
（あ！健二さんたちが席を立つわ。）

まりは何かを思いついたように慌てて立ち上がった。

「佐奈さん、私ちょっとお手洗いに…」

「あ、うん。」

まりが席を外した後も残りの料理をきれいに食べつくしていく。

（こんな料理滅多に食べられへんし、絶対残さんと食べよう。）

佐奈は背後から誰か近づいてきている事なんか気にも止めなかった。

ゆっくりと佐奈のテーブルの横をすり抜けて行くカップル。

何気に通り過ぎる男の顔が目に飛び込んできた。

（あれ？今のは健二…？）

いや、そんな事はないと必死で自分に言い聞かせる。

「健二くん、今日も部屋予約した？」

その女性は甘える声で確かに［健二］と呼んだ。

（やっぱり…健二やん。）

佐奈の手からフォークとナイフがすべり落ちていく。

佐奈は無意識に席を立ちあがり健二たちの後を追いかけた。

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表紙・目次

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