Luck TesT
「お医者さんの話じゃ、たぶん、精神的なものだろうって」

小さく息を吐く。
毎日顔を見に行っているのだが、一向に目覚める気配がない。

「きっと…あんなことがあったから…」

結斗が倒れる直前のあのやりとり。
きっとそれが、原因なんじゃないかと、葵は思っていた。

「そうか」

布施はそう言って、窓の外を見た。

「難波、あいつはあれでも、良い警官だと思ってたんだがな…」

そう呟くと、視線を葵に戻し、深々と頭を下げた。

「え??」

驚く葵。
布施は頭を下げたまま、続けた。

「もう、難波はこの世にはいない。俺が謝って済む問題ではないのはわかっているが…申し訳なかった、本郷」

その言葉に、葵は慌てて首を横に振った。

「い、いえ!そんな…理由は確かにあれですし、最終的には命を狙われましたけど…でも、今こうやって私が生きてるのは、難波さんのおかげでもありますから」

そう言って、少し複雑そうな顔をして、葵は笑った。

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