Luck TesT
二人っきりになった病室内は、沈黙に包まれていた。
いざ話ができる状態になったというのに、葵は何から話せばいいのか、少しだけ悩んでいた。

「で…話って、なに?」

結斗がぶっきらぼうに言う。

「あ、その。えっと…」

「俺のこと、人殺しって言いたいんだろ」

結斗の言葉が理解できず、葵はえ?と首を傾げた。

「葵のこと、最後に殺そうとした。だから、俺のこと、殺される前に殺しにきたんだろ?」

自嘲気味に結斗は笑った。

「いいよ、殺せよ。俺はまだ、満足に動けねぇし。今なら母さんもいない。チャンスだろ」

その言葉に、葵は思わず結斗の傍に駆け寄り、顔を叩いた。


ぱぁん、という、乾いた音が、病室内に響き渡った。

< 420 / 436 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop