Luck TesT
暫く、葵の泣き声と嗚咽だけが響いていた。

「…ごめん、葵」

小さな小さな結斗の声。
その声に、葵はゆっくりと顔をあげた。
そこには、結斗が同じように、床に座って、葵の方を見て困った表情を浮かべていた。

「俺、さ、お前のこと、あのときは殺さなきゃって、思ったんだ」

結斗の言葉に、葵は小さく頷いた。

「目が覚めた時、お前が病室に入ってきたのを見て、俺は殺されるんだって思った」

葵はふるふると頭をふった。

「そんなこと、しないもん」

その葵の様子に、結斗は小さく微笑んだ。

「うん。お前はそんな奴じゃないもんな。ごめん」

そう言って、葵の頭を優しく結斗は撫でた。
葵はまた、暫く泣き続けた。

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