誓~天才演技者達の恋~
由梨は校舎の裏で叫ぶ。
そして由梨はハッとし、自分の携帯でCMを見た。
「嘘....よ。なんで....。」
最初から分かっていたことではないか....。
卓也を笑わせられる女。
それは白野百合亜だけだと...。
「演戯祭に居た時の子ッ!?」
由梨は何度も何度も再生するが、あの時の子とはとても思えない。
“化粧で女は変わる”というが、変わるどころの話では無い。
別人。その言葉でさえ足りない。
「誰なの....この女....」
由梨は背中に悪寒を感じた。
身体を震わせ、しゃがみこむ。
由梨は初めて、女優生命の危機を思い知った。
百合亜が死んだ後、由梨は自分が一番だと思い込んでいた。
「私は、天才じゃ...ないのね」
由梨の携帯の画面には、10人が目まぐるしく笑顔を見せる。
{Yuria,紫のドレス「大人になるには、パールジューエーリ」}
{卓也,「キミの瞳の奥深くまで愛したい」}
「うぅ...ッ....」
CMの誰だかが噂になる中、由梨が悔しく泣く中、ユリアはひたすら台本を読んでいた。
賢斗は、仕事の合間に菊花邸に来て、台本を読むユリアの横顔を見つめていた。
「ユリア....演技、楽しいか?」
「うん!とっても」
首元では、ネックレスが踊る。
賢斗は笑顔を見せると、早めに菊花邸を出た。
「あれ....?賢斗、台本忘れていっちゃった?」
ユリアは台本を捲る。
それは嵐を呼ぶであろう、後期の演戯祭の台本だった。