誓~天才演技者達の恋~


由梨は校舎の裏で叫ぶ。

そして由梨はハッとし、自分の携帯でCMを見た。


「嘘....よ。なんで....。」


最初から分かっていたことではないか....。

卓也を笑わせられる女。

それは白野百合亜だけだと...。


「演戯祭に居た時の子ッ!?」


由梨は何度も何度も再生するが、あの時の子とはとても思えない。

“化粧で女は変わる”というが、変わるどころの話では無い。

別人。その言葉でさえ足りない。


「誰なの....この女....」


由梨は背中に悪寒を感じた。

身体を震わせ、しゃがみこむ。

由梨は初めて、女優生命の危機を思い知った。

百合亜が死んだ後、由梨は自分が一番だと思い込んでいた。


「私は、天才じゃ...ないのね」


由梨の携帯の画面には、10人が目まぐるしく笑顔を見せる。


{Yuria,紫のドレス「大人になるには、パールジューエーリ」}

{卓也,「キミの瞳の奥深くまで愛したい」}


「うぅ...ッ....」


CMの誰だかが噂になる中、由梨が悔しく泣く中、ユリアはひたすら台本を読んでいた。

賢斗は、仕事の合間に菊花邸に来て、台本を読むユリアの横顔を見つめていた。


「ユリア....演技、楽しいか?」

「うん!とっても」


首元では、ネックレスが踊る。

賢斗は笑顔を見せると、早めに菊花邸を出た。


「あれ....?賢斗、台本忘れていっちゃった?」


ユリアは台本を捲る。

それは嵐を呼ぶであろう、後期の演戯祭の台本だった。


< 102 / 252 >

この作品をシェア

pagetop