誓~天才演技者達の恋~


明華の芸能科では、卓也の言葉は絶対。

それがたとえ3年生が相手でも....。


「Yuria。CMの時みたいに、好きなようにやれ」

「あ、ありがとう」

「この前は、無理やり抱きついたから...そのお詫び」


卓也はユリアの耳元でそう呟くと、楽屋に入って行ってしまった。

――ドクドクッ

ユリアの鼓動が速くなる。


「緊張....?」


ユリアはまだ、この気持ちに気づかないフリをした。

記憶をしる何処かが、駄目ッって言っているようだった。


ユリアの表情を見つめる賢斗。

閉まった楽屋の扉を見つめる由梨。

それぞれが複雑な思いを抱える中、ユリアは一人、笑顔だった。


「私は、ホワト姫とブラク姫。一人の姫に眠っている二人。王子様はどちらに恋をするのだろう....?」


ユリアは王子役を見つけると、ふわりと微笑んだ。

王子役は顔を真っ赤にして、ユリアに笑い返す。


「さぁ、始めましょうか」


ユリアが指を鳴らすと、タイミングよくベルが鳴る。

途端にユリアは優しい笑みで、舞台に上がっていった。

小阪だったハズなのに、出てきたのは別人。

マスコミや審査員、客席はザワザワとする。


ユリアは深呼吸をすると、表情一つで演技ホールを、その世界へと誘う....。

マスコミ達も撮影を忘れて、ユリアに食い見る。


{Yuria,「王子?王子?」}


するとユリアは突然、舞台上から降りた。

舞台袖のスタッフは、目をまん丸にする。


{王子役,「ホワト姫ここだよ」}

{Yuria,「王子!!」}


そう。ユリアは演技ホールを端から端まで使って、演技をし出したのだ。

瞬きするのが惜しいくらい、Yuriaは光り輝いていた。

< 106 / 252 >

この作品をシェア

pagetop