誓~天才演技者達の恋~
明華の芸能科では、卓也の言葉は絶対。
それがたとえ3年生が相手でも....。
「Yuria。CMの時みたいに、好きなようにやれ」
「あ、ありがとう」
「この前は、無理やり抱きついたから...そのお詫び」
卓也はユリアの耳元でそう呟くと、楽屋に入って行ってしまった。
――ドクドクッ
ユリアの鼓動が速くなる。
「緊張....?」
ユリアはまだ、この気持ちに気づかないフリをした。
記憶をしる何処かが、駄目ッって言っているようだった。
ユリアの表情を見つめる賢斗。
閉まった楽屋の扉を見つめる由梨。
それぞれが複雑な思いを抱える中、ユリアは一人、笑顔だった。
「私は、ホワト姫とブラク姫。一人の姫に眠っている二人。王子様はどちらに恋をするのだろう....?」
ユリアは王子役を見つけると、ふわりと微笑んだ。
王子役は顔を真っ赤にして、ユリアに笑い返す。
「さぁ、始めましょうか」
ユリアが指を鳴らすと、タイミングよくベルが鳴る。
途端にユリアは優しい笑みで、舞台に上がっていった。
小阪だったハズなのに、出てきたのは別人。
マスコミや審査員、客席はザワザワとする。
ユリアは深呼吸をすると、表情一つで演技ホールを、その世界へと誘う....。
マスコミ達も撮影を忘れて、ユリアに食い見る。
{Yuria,「王子?王子?」}
するとユリアは突然、舞台上から降りた。
舞台袖のスタッフは、目をまん丸にする。
{王子役,「ホワト姫ここだよ」}
{Yuria,「王子!!」}
そう。ユリアは演技ホールを端から端まで使って、演技をし出したのだ。
瞬きするのが惜しいくらい、Yuriaは光り輝いていた。