誓~天才演技者達の恋~
Yuriaの舞台は大波乱
香織は演技ホールに足を運び、声にならない悲鳴をあげた。
すぐさま和人を掴み、話を聞く。
「どういう事ッ!?」
「それが、俺にもよく理解出来ないんです。」
「はぁ!?」
舞台上のユリアは、まるで記憶を取り戻したかのようにキラキラしている。
だからこそ、今、彼女が舞台に上がることは許されなかった。
香織は演技ホールの二階、報道陣に紛れて、舞台上のYuriaを見ていた。
「どうやら、元々の主役が倒れたらしくて...それをユリアが聞いて...車から飛び降りたんです」
「飛び降りた....?」
「はい、何かスイッチが入ったみたいに」
香織は「あ、そう」と呟くと、演技ホールから出て行ってしまった。
和人は安堵のため息をつきながら、ユリアを見る。
{ブラク姫,「はじめまして王子、私はブラク姫でございます」}
{王子,「あぁ、なんて美しいんだ。まるで花瓶に挿された一輪の薔薇のよう」}
和人はユリアの演技を見ながら思う。
毎回、演技を楽しそうにやるな...と。
記憶を失ったユリアにとって、Yuriaで活動することは、いいことであり、逆を言えばリスクを伴う。
「でもユリアは楽しそうにやっている。
なのに、香織さんは何が不満なんだろう....。」
香織は演技ホールから出ると、外の駐車場に止めてある愛車に近づく。
すると、横からタバコを銜えた男が出てきた。
「ビックリだぜ。菊花香織がまさか、あんただったとはな」
香織はあからさまにため息をつくと、自分の愛車に身体を預ける。
鎌足はケラケラ笑うと、足でタバコの火を消した。
「その言い方は演技?本当は知っていたクセに。」
「......」
「あなたは昔からそうだわ。
自分が“確信していること”にしか興味を示さなかった。」
鎌足が黙って、香織を見つめる中、香織はクスリと笑った。
「あの時も“私があなたを好きだと知っていた”から、告白してきたんでしょう?」