誓~天才演技者達の恋~
一方ユリアのほうも、クライマックスに向けて、盛り上がっていた。
{ブラク姫,「へぇ、あなたは...ホワト姫を愛すると言うのね」}
ブラク姫の時のYuriaは、表情が氷のように冷たかった。
その表情や声に観客は、背中から汗を流す。
そして台本を知っている役者でさえ、恐怖といった感情を抱く。
――グラッ
ユリアはブラク姫になりきっている最中、天井にぶら下がっているライトに違和感を感じた。
一つだけ、長く下に伸びたライト。
そして、その下には王子役が演技の真っ最中だった。
――ガタンッ
さびた音と共に、ライトが真下に落ちてくる。
ユリアは懸命に手を伸ばして、王子を抱きかかえた。
――ガシャーン
観客からの不安の声。
ユリアは王子からゆっくりと離れる。
ユリアのすぐ後ろには、粉々になった照明(ライト)
{王子,「Yur...」}
{Yuria,王子を抱きしめる「王子、大丈夫でしたか?」}
舞台袖の人間が、幕を下ろそうとした時だった。
ユリアはなんと、セリフを変えて演技をし出したのだ。
「このまま演技を続けます。私に合わせてください」
ユリアは耳元で呟くと、王子は密かに頷いた。
ユリアは笑顔を見せると、突然頭を抱えた。
王子役は演技かと思い、アドリブを言っている。
ユリアは頭を抑えながら、王子役の言葉に耳を傾ける。
{王子,「どうしたのですか?ブラク姫?」}
{ブラク姫,「あぁ、そうだわ...私はブラク姫。なのにホワト姫でもあるんだわ」}
{王子,「どういうことです...?」}
その時、ユリアはズキズキする頭を抱えながら、ブラク姫とホワト姫が混じった表情を見せた。
{姫,「王子...あなたは...王子はどちらの私が好き?」}