誓~天才演技者達の恋~
ユリアは心で呟くと、演技モードに戻った。
{卓也,「姫には時間が無くてね。王子の心を知りたくて知りたくて、俺に頼んだんだよ。」}
{王子,「な、何をです...?」}
{卓也,「二重人格だよ。天使のようなホワト姫。悪魔のようなブラク姫。王子がどちらを好むか、姫は残りの命で試したんだよ」}
舞台袖は、安堵のため息を全員でつく。
見事に話は繋がっているし、無事に終わるかと思われた。
卓也の腕の中のユリアが、可笑しくなければ...。
「イッ!!」
突然に響いた、ユリアの苦痛な声。
演技では無いことは、卓也にしか気がつかない。
「おいッ!大丈夫か?」
「えん..ぎぃを、続けて...くださいッ」
卓也は腕の中のユリアを、そっと舞台上に降ろすと、ユリアの手をとり涙ぐむ卓也。
王子もそれを見て、ユリアの身体をきつく抱きしめる。
{王子,「ごめんな、姫。俺は最低だ。ブラク姫もホワト姫も...愛そうとした。俺は...俺は最低だ!!」}
{姫,「王子は...最低なんかではありません。私がいけないのです。あなたの心を試そうとしたから....だからぁ....」}
{王子,「姫?姫ッ!!」}
演技ホールに拍手が巻き起こる。
幕が静かに閉まっていく中、卓也はユリアの苦しむ姿を見ていた。
「日比野、触るな」
幕が閉まった後、賢斗はユリアを抱えあげた。
卓也は何も言わず、無表情で賢斗を見る。
「ユリアは俺の女だ」
「..........」
「誰にも渡すつもりは無いし...“返すつもりも無い”」
「....?」
明日香は舞台裏に忍び込んで、ユリアを見た。
そして今の言葉に確信する。
「見つけた。百合亜」