誓~天才演技者達の恋~


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ユリアは明華の保健室のベットの上で、日比野卓也の顔を思い出していた。


「ユリアさん、この後の記者会見...どうしますか?」


和人は、ユリアの顔を覗きこみながら、ユリアに質問をした。

ユリアの頭痛は痛み止めによって和らぎ、ユリアも笑えるようになっていた。


「やります。どれだけの人が、私を知りたくて知りたくてたまらないか..私は知っています」


ベットから起き上がり、ユリアはそう言う。

賢斗はカーテンの向こう側で、複雑な表情を浮かべていた。


「何で、あいつはユリアが苦しんでるの...分かったんだろうか...」


賢斗には分かっていた。

ユリアが苦しんでいることくらい分かっていた。

だけど、卓也みたいに助けられなかった。

演技までして、助けようなんて思わなかったし、足が動かなかった。


「ユリア...大丈夫か?」

「うん、賢斗ありがとう。
でも、日比野卓也にもお礼を言わなくちゃ。
演技までして助けてくれたおかげで、いつもより痛くならずに済んだの」

「そ、うか...」


ユリアはカーテンを開けて、賢斗の表情を見た。

そして、クスリと笑う。


「ねぇ、嫉妬してくれてるの?」


ユリアの言葉に賢斗は笑う。

それを見て、ユリアは幸せそうに笑った。


「日比野卓也ってなんだか不思議ね。
演技だと凄く笑顔を見せるの。」

「えっ!?」

「私を抱えてくれた時だって、優しく微笑んでくれたわ。
この人なら大丈夫かもって...思ったの」


その時のユリアの表情は、賢斗に向けられたことが無く。

見たことも無いくらいに、乙女の顔をしていた。


「オマエ....」

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