誓~天才演技者達の恋~
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_____二月の終わり__
「キャァー!Yuria!!」
ユリアは車の中から手を振る。
いつも笑顔を絶やさないユリア。
後期の演戯祭の後、数々のドラマや映画、CMの出演が決定した。
「大忙しだね、ユリアさん」
「えぇ、嬉しく思う反面、怖いの」
「....?」
「記憶前の私が、私の中でも消えていっている気がして」
和人は何も言えず、ハンドルを握り締める。
ユリアは外で手を振ってくれるファンに笑顔で手を振るが、心なしか、複雑な表情を見せていた。
「ねぇ、記憶を取り戻したら....何でも無い」
和人は、ユリアの家の前に車をつけると、後部座席を開けた。
そして、ユリアと共に家に入る。
「ユリアさんも、もうすぐで高校生ですね」
「あぁ...そうね。中学は名前だけ貰っていたから、行ってないんだけどね」
「高校を勝手に決めさせていただきました」
和人はユリアの目の前に、明華学園と書かれた封筒を渡した。
ユリアは抱きしめるように持つと、笑顔を見せる。
「明華の芸能科って...特例じゃないと、高校からの入学って認められないんじゃないの?
だから、諦めていたのに...。」
「十分に特例ですよ。ユリアさんは後期の演戯祭に出て、成功をおさめたんですから」
ユリアは封筒を持ちながら、涙を見せる。
明華はユリアにとって夢だった。
「昔から...夢だった...」
ユリアは口を塞ぐ。
和人には聞かれていなかったようだ。
「む、昔から?」
「ユリアさん?」
「私の夢は、記憶を失う前も...今と同じだった?」