誓~天才演技者達の恋~
トップ生徒の二人。
「行ってらっしゃい、ユリアさん」
和人の言葉に頷くと、ユリアは明華の門を潜る。
桜が満開に咲き、風にのってヒラヒラと落ちる。
「綺麗だわ...」
高1になったユリアには、恋愛系の話がよく上がった。
でもまだ、世間に城崎賢斗の彼女。という認識はされていない。
つまりはバレていないのだ。
「何で...みんないないのかしら?」
「Yuria?」
ユリアはゆっくりと振り返る。
彼は、ユリアの前髪についた桜を取ると、桜の花びらを風にのせた。
「日比野君...」
「卓也でいいのに。特例なんだね。」
卓也の言葉に頷くと、ユリアはこの前のお礼をする。
頭を下げるユリアに、卓也は優しく微笑んだ。
「いいんだよ。俺が勝手にやったことだし」
「でも、付き合ってる説とか出ちゃったし...彼女の歌原由梨さんにも迷惑かけちゃったと思うから....」
卓也は一瞬、傷ついた表情を見せる。
ユリアはその表情に、口を開けた。
「どうしたの?深刻な顔して」
「.....卓也くん?」
「ん?」
ユリアは喉まで来ている言葉を言おうか悩む。
でもあの顔は、ずっと残って離れようとしない。
「歌原由梨さんと付き合ってるのって...本当ですか?」
卓也は案の定、目をパチクリしてユリアを見る。
すると卓也は鼻で笑って、ユリアと目を合わせた。
「付き合ってるよ。
たとえ愛がなくても....。
身体を重ねること、唇を重ねることは出来るらしいからね」