誓~天才演技者達の恋~


教室の窓際で、不安そうに見つめる百合亜。


周りのクラスメイトからすれば、その姿でさえドラマのワンシーン。


百合亜の学年は変わっていて、芸能人はいるしモデルもいる。


そして留めには、世界のお嬢様だ。


まるで私立学校を思い立たせるが、ここは県立。

表沙汰は、ごくごく普通の小学校である。


しかしこの学校は中学受験が盛んであり、百合亜のクラスメイトのほとんどが受験生だった。


季節は12月。

不安と焦りが見え始めているクラスメイト達は、掃除の時間でさえ惜しい...という顔つきだ。


百合亜はそんな周りを見て、つい先日までは“明華学園”に行く気だったことを思い出す。


明華(メイカ)学園はちょっと特殊で、中学から“芸能科”が存在する学園。


他には“普通科”“音楽科”“商業科”“家政科”“看護科”などさまざまな科があり、人気の高い学園だ。


そしてその中でも、特に厳しいのが“芸能科”だった。


条件としては、オール4以上。


そして何処かの芸能プロダクションに所属していることが大前提。


百合亜は勉強は出来るほうで、テストの前日には『台本と一緒』と言うほどだ。

百合亜の成績はオール5


いつまでもオール4の卓也からすれば、非常に悔しいことだった。


なんせ、卓也は皆勤賞ほどの人間で、百合亜は一週間に一度出席していればいいほう。


ちなみに気分屋で、サボリを良くする明日香は4と5がミックスされていた。


しかしハリウッドとの契約が決まり、明華学園に入るのは高校生からとなった。


明華側も、二つ返事。


それほど、自分の学園に白野百合亜が欲しかったのだろう。



「一緒に肩を並べて歩きたかった...」



ボソリと呟いたつもりだったのに、声が大きかったらしく、クラスメイト全員が百合亜を見ていた。


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