誓~天才演技者達の恋~


「世間...?」


記憶を無くしたユリアは、白野百合亜の存在を知るよしも無かった。

もちろん、卓也はユリアが記憶喪失だとは知らないため、卓也は話を続ける。


「俺は頑張って、ここまで来たのに...肝心なあいつはいない」

「........」

「あいつが死んでから、もう4年近くも経つのな...」


少し涙の残る頬に、桜の花びらがくっつく。

4年。

それはユリアにとっても関係している数字だった。


「わ、私がちょうど...記憶を失った頃?」


――ドクッドクッ

ユリアは急に、頭を抱える。

卓也は倒れいくユリアの身体を抱きしめた。


「Yuria?」


『落ち着く。
あなたの腕の中は落ち着く。
この痛みさえも和らげる...。』


卓也は息の上がったユリアを抱きかかえる。

すると、ユリアは卓也の肩に顔を乗せ、ゆっくりと瞼をおろした。


「オマエ、何か病気でも抱えてんのか?じゃなきゃこんなに倒れ...」

「スゥー、スゥー」


寝ているユリアを見て、無表情だった顔が、一気に綻んだ。

卓也は、ユリアの顔を横目で見ながら、賢斗の言葉を思い出していた。


「会ったら、一瞬で落ちる...か。」


卓也の中で、話が繋がった気がした。

賢斗とユリアは付き合っている。

だから、あの時言ったのかも知れない。

卓也は落ちると....。

本当は、百合亜にそっくりなユリアに落ちる。

賢斗はそう言いたかったに違いない。


「なぁ、オマエは何で、そんなにそっくりなんだ?」

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