誓~天才演技者達の恋~


ユリアは驚きのあまり、口を塞ぐことが出来ない。

確かに、勉強は苦手ではなかったが、中学校さえロクに行っていない彼女が、ここのトップとして君臨してていいのか、考え物だった。


「私なんかが...いいんでしょうか...」

「ずいぶんと弱気だな。女優としてのYuriaの時が強気だから、菊花ユリアでも強気なのかと思ってた」


見透かされた気がした。

菊花ユリアの時は、Yuriaほど自分に自信が無いことを。


「あなたは不思議だわ」


ユリアは呟くと、保健室から演技ホールを見る。

卓也はベットから起き上がって、座るような形になっていた。


「私が菊花ユリアだと自信が無いのは、自分が分からないからなの。演技で探そうとしてるのよ。前のあたしを」

「....なんだか難しいな。」


卓也はそう言うと、布団を綺麗に畳みだした。

ユリアも釣られて、自分が寝ていた布団をたたみだす。


「ハハッ、なんか可笑しいな」

「何がよッ!!」

「うーん、本当に可笑しいんだ」


『百合亜にそっくりなオマエが、今こうして明華の芸能科にいることが』


卓也は睨んでくるユリアを鼻で笑い、またユリアの怒りを買う。

ユリアも見た目は怒っているが、見た目ほど怒ってない。

むしろ久しぶりに笑った気がしてならなかった。


「卓也くんって、よく笑うのね。世間のイメージとのギャップが凄いわ」

「はぁ!?」

「だって氷のような私生活を送ってるって、聞いたんですもの。笑わないからっていう理由で。
でも卓也くん、演技以外でも普通に笑ってるし、笑ってくれる。

全然氷じゃないじゃないじゃない。」


卓也は咄嗟に、保健室にある鏡に自分を映す。

そこに映っているのは、百合亜といた時のような笑顔。

失いかけていた笑顔の自分が映っていた。


「ね?凄く笑顔でしょう?自分で思わない?」

「ッ....!!」

< 124 / 252 >

この作品をシェア

pagetop