誓~天才演技者達の恋~
ユリアは驚きのあまり、口を塞ぐことが出来ない。
確かに、勉強は苦手ではなかったが、中学校さえロクに行っていない彼女が、ここのトップとして君臨してていいのか、考え物だった。
「私なんかが...いいんでしょうか...」
「ずいぶんと弱気だな。女優としてのYuriaの時が強気だから、菊花ユリアでも強気なのかと思ってた」
見透かされた気がした。
菊花ユリアの時は、Yuriaほど自分に自信が無いことを。
「あなたは不思議だわ」
ユリアは呟くと、保健室から演技ホールを見る。
卓也はベットから起き上がって、座るような形になっていた。
「私が菊花ユリアだと自信が無いのは、自分が分からないからなの。演技で探そうとしてるのよ。前のあたしを」
「....なんだか難しいな。」
卓也はそう言うと、布団を綺麗に畳みだした。
ユリアも釣られて、自分が寝ていた布団をたたみだす。
「ハハッ、なんか可笑しいな」
「何がよッ!!」
「うーん、本当に可笑しいんだ」
『百合亜にそっくりなオマエが、今こうして明華の芸能科にいることが』
卓也は睨んでくるユリアを鼻で笑い、またユリアの怒りを買う。
ユリアも見た目は怒っているが、見た目ほど怒ってない。
むしろ久しぶりに笑った気がしてならなかった。
「卓也くんって、よく笑うのね。世間のイメージとのギャップが凄いわ」
「はぁ!?」
「だって氷のような私生活を送ってるって、聞いたんですもの。笑わないからっていう理由で。
でも卓也くん、演技以外でも普通に笑ってるし、笑ってくれる。
全然氷じゃないじゃないじゃない。」
卓也は咄嗟に、保健室にある鏡に自分を映す。
そこに映っているのは、百合亜といた時のような笑顔。
失いかけていた笑顔の自分が映っていた。
「ね?凄く笑顔でしょう?自分で思わない?」
「ッ....!!」