誓~天才演技者達の恋~
「良かった、ここが取れただけか...」
ユリアは呟くと、頬同士がくっつきそうなくらいに近づいていた、卓也に小さな悲鳴を上げる。
卓也はその隙をついて、ネックレスを奪うような形で取る。
「ちょっ!!」
身長差があるユリアにとって、卓也の頭よりも高く上がった物を取るのは不可能。
ユリアがジャンプをして、奪い返そうとしている時、卓也はリボンのチャームの後ろ側を見る。
「Yuria...」
そこにはしっかりと、Yuriaと掘られている。
4年ほど前、卓也が百合亜にあげた物を、そっくりなユリアが持っている。
偶然という言葉では、足らない気がしてならなかった。
「オマエ...まさか...」
ユリアが卓也からネックレスを取る。
卓也は何も言わず、唇を噛んでいた。
――ドンッ
ユリアを壁に追い込み、卓也は両手を伸ばす。
「な、何よ...」
「教えろ、そのネックレス...どうしたんだ?」
さっきの笑顔とは逆で、恐ろしく怖い顔。
ユリアの足は、ガクガクに震え出す。
「誰から貰った?」
「け、賢斗よッ!当たり前でしょう?」
ネックレスを両手で握り締め、卓也をキッと睨む。
卓也はそんな目では怯まず、相変わらず怖い顔をしていた。
「どういう状況で?」
「シチュエーションってこと?
びょ...病院で貰ったのよ...目を覚ました時、病院で...」
卓也が次の質問をしようとした時、卓也の携帯が鳴り響いた。
ユリアはその間に卓也からすり抜けて、保健室から飛び出した。
何故だか抑えられない涙を拭きながら....。