誓~天才演技者達の恋~

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強がりなユリアを演じて、和人の車に乗ったユリア。

完璧な演技に、和人はユリアがさっきまで泣いていたことに、気がついていない。


「修学旅行ですか?」

「うん、本当なら中学三年で行くんだけどね。明華は違うんだ。
中三は学科選択とかいろいろあるから、修学旅行は行なわない。

その代わり、高1の春から夏の間に修学旅行をやるんだよ。
どうせメンバーは、少し増えただけだからね」


明華の年間行事表を見ても、高1修学旅行と書かれている。

ユリアは年間行事表を見ながら、思ったことを口にした。


「ねぇ、芸能科の人間には、鬼のようなスケジュールじゃない?」

「そうだろうね。修学旅行は一週間、その三日後には演戯祭の台本締め切り。本当に鬼だよ。」


和人は運転しながら笑う。

ユリアはとても笑う気がしなかった。


「ねぇ、修学旅行って...どこ行くの?」

「選択じゃなかったかな?国内、世界...って」

「私...パスします。無理やり仕事...入れてください」

「えっ!?確かに高校からの入学で、気まずいかも知れないけど、でも親睦を深める意味でも行ったほうが...」


ユリアは頑なに首を振る。

ただ、見たくなかった。

日比野卓也の顔を見たくなかった。


「ねぇ、日比野卓也の好きな人って...知ってる?」

「えっ!?」

「知ってるワケないわよね。死んだって言ってたんですもの」


和人は心の中で呟く。

『それはキミだよ』と...。


「とにかく、キャンセルってか...欠席ね。修学旅行は...」

「ユリアさん..」


ユリアは広い車内で寝転ぶと、目を閉じた。

でも何故か、怖い思いをしたはずなのに、卓也に抱えられた時のように寝られない。

落ち着いて眠れなかった。

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