誓~天才演技者達の恋~
一方その頃...。
「オマエ、ランドセルでは入っちゃマズイだろう?」
「何言ってるの!?
私...霧島のお店よ!!」
明日香に腕をひかれ、卓也は腰を引きながら店に入る。
まぶしいほどに光った宝石が、透明なガラスケースに入れられている。
チラッと値段を見ても、0がいくつあるのか数えられないほど。
「あんたには無理でしょう!?
私じゃあるまいし」
けして学校では言わないプチ自慢。
ちなみに、明日香の貯金通帳にはすでに、壱千万以上の金が入っている。
そんな自慢話を明日香は、卓也の前でだけでする。
そして卓也の露骨に嫌な顔を見るのが、明日香なりの楽しみでもあった。
「あれッ!?明日香ちゃん?帰って来たの?」
店内の中央にある白い螺旋階段から、真っ赤なドレスを纏った女性が、気品あるオーラをバラまきながら降りてきた。
卓也は一瞬、明日香のお姉さんかと思った。
しかし、明日香は正真正銘の一人っ子。
お世辞でも無く、若々しく見える。
「オーナー」
明日香が声をかける前に、店員やお客が頭を下げた。
「母様は、ザギン店のオーナーなの。
父の役を奪ったのよ。実力で」
「オマエの呼び方から分かるよ」
様がつく母親と、ただの父。
とても幸せそうな家族は、想像できない卓也であった。
「今、娘が来てるの。
あとにしてくれる?」
あなたの目は節穴?と言いたげな目で、社員を睨む明日香の母親。
「申し訳ございません、オーナー」