誓~天才演技者達の恋~


「あっーもう!寝れない!」


突然の叫びに、和人は驚いて急停車。

ユリアは急停車しても何も言わず、遠くを見つめている。

和人が声をかけるが、届いていないようだった。


「ねぇ...」

「はい、なんでしょう?」

「次の仕事...なんだっけ?」


ユリアが仕事内容を忘れるのは、初めてと言っていい。

和人は熱があるんじゃないかと心配するが、そんなことは無いようだ。


「美星堂のCMですよ。日比野卓也さんと」

「えっ!?」


漫画みたいに、車のシートから落ちるユリア。

その驚き方といい、異常すぎる。


「何かあったんですか?日比野さんと」

「まっ、まさか...あるわけないじゃない」

「あったんですね」

「ッ....!!」


ユリアはポケットからネックレスを取り出し、握り締める。

和人はそれ以上何も言わず、車を発進させた。


「き、気まず過ぎる!!」


和人はユリアの独り言に耳を傾けるが、聴こえない振り。

そういう意味では、一流の俳優になれる。


「あぁ、ユリアさん。」

「ん?」

「今日、キスシーンありますから」


ユリアは口を開けて、窓を開けて叫ぶ。

和人は運転席のボタンで閉めるが、ユリアはまた開けて、外に向って叫んでいた。


「ユリアさん!問題になりますからッ!」

「馬鹿ッ、こっちの方が...大大大大問題よ!」


ユリアは叫んだ後に、卓也の顔を思い出す。

何故だか身体を熱くしていた。

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