誓~天才演技者達の恋~


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「着きましたよ、ユリアさん」


ユリアはゆっくりと目を覚ます。

気持ちは乗り気じゃないまま、スタジオに降りる。

辺りを見渡すと、まだ卓也は来ていないようだ。


「Yuria!高校入学おめでとう。聞いたよ。特例だってね」


師羅にいきなり花束を渡されたユリアは、戸惑いながらも花束を受け取る。

やっと状況が理解できたユリアは、笑顔をスタッフ達に見せた。


「今日は、勝気なお嬢様的なキャラが、ついにメイクの支配人...卓也とキスをするぞ」

「は、はぁ...」

「Yuriaでのキスシーンは、初かな?」

「...?」


『Yuriaでの』という師羅の言葉に、何故か突っかかりを覚えたユリア。

師羅は何事も無いかのように、スタッフ達に話をしている。


「どういう事?師羅監督は、私が賢斗と付き合ってるの知ってるの?ま、まさかッ」


ユリアが一人赤面していると、車が一台到着した。

師羅はすかさず花束を持ち、その車の後部座席へと近づく。


「卓也、高校進級おめでとう」

「師羅監督!いきなりだから、ビックリしましたよ」


師羅は後部座席をいきなり開けて、驚く卓也に花束を渡した。

師羅は一瞬笑った卓也に、逆に驚かされたものの、何も思っていないような顔に戻った卓也を、不思議な目で見ていた。


「あっ!」


卓也が大声を上げると、ユリアは咄嗟に卓也を見る。

すると卓也の思い通りなのか、視線が合う。


「監督、ちょっとYuriaと話してきてもいいですか?」

「えっ...!?いいけど...」


監督がそう言うと、ユリアは逃げ腰になるが、あっさりと捕まった。

卓也は急がすようにユリアを引っ張る。

ユリアと卓也は、スタジオ裏に入って行った。

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