誓~天才演技者達の恋~


「ごめん」


スタジオ裏に入ると、卓也はいきなり頭を下げた。

突然の行動に、ユリアはついていけない。


「死んだ彼女にあげたネックレスに似てたから...つい、取り乱してあんなことを...本当にゴメン」


ユリアはうらやましいと思った。

こんなに愛してもらっていることを....。

天国の顔の知らない人に、少し嫉妬した。


「ネックレス一つで取り乱すなんて、役者として最低ね!」

「....」

「でも...一人の人間としては、凄いと思うわ」


ネックレス一つで彼女を思い出して、取り乱す。

だから彼は、4年間も笑わなかった。

氷と言われていた卓也の秘密や弱点を知れて、ユリアはなんだか嬉しかった。


「いいの、私もビックリしただけだから」

「.....」

「ちょっと見直した。男としては最高ね。卓也は」


卓也は呼び捨てにされたことに驚いた。

さっきまで卓也くんだったのに...。


「い、言っとくケド!
Yuriaとして演技したのも、Yuriaとしてキスをするのも...あなたが初めてなんだから」

「!!!!!!!」

「何で顔真っ赤にするのよ!こっちまで恥ずかしくなるでしょう?」


ユリアは顔を真っ赤にしながら、卓也と笑いあう。

すると恥ずかしさの限界なのか、走ってさっきの所まで戻ってしまった。


「なんだあいつ...最近流行のツンデレか?」


卓也はニヤけながらユリアの背中を見つめる。

さっきとは違う後姿。

卓也は、最後に百合亜を見たときを思い出した。

百合亜を最後に見たのも、後姿。


「ユリア...本当に不思議だ」

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